完全再現不可能だからこそいい

美容師の仕事は完全再現不可能ですよね? 前回と同じようにというオーダーがあったとしても完全に再現することは無理な訳ですよね。なぜならそこには様々な要因が絡み合った上で施術を行う訳でその部分も含め経緯を再現する訳だから実質的には不可能ですよね。その時に生み出されたデザインは不可逆的なものです。
しかし実際にはオーダーに応えるべく現状を把握した上で、前回のニュアンスに近づけるために必要なチョイスを以って完成させます。 この時にやはり必要な力として技術的なスキルというよりも分析力と判断力だと思うわけです。

例えば短絡的に分析、判断すれば「1センチ伸びたから、1センチ切っておけばいい」となるわけです。でも実際の分析、判断の過程では「髪のコンディションが乾燥気味なので1センチ切ってしまうと過剰な膨らみが出るのでニュアンスが変わってしまう」とか「少しセニングが中間部分に前回入っていて、前回と同じ切り方をするとセニング量が前回の施術部分に重複する形となり毛先がスカスカになってしまうのでニュアンスが変わってしまう」などまだまだ分析出来るわけです。   

なので何を以って以前のスタイル、もしくはお客様の希望とするヘアースタイルを再現するかというと、分析する範囲を拡大しテクニカルな部分だけでなく、お客様の趣味性であったりその日のメンタルであったりを見定めていった上での判断が必要になってきます。あと言葉の意味も表層で理解するのではなく深層部分での理解をする必要も大切だと思っています。我々はプロでお客様は素人な訳なので技術的な知識や理論を知らなくて当然なのでそこを求めることはナンセンスな話です。限られた情報をどこまで広げていき解釈を深めていくかが顧客満足につながる一つの要因ではないかと考えています。もっと広い視野と細かな注意力が必要ですね。

もっと自分という存在を自分から遠く離し、完全に俯瞰した状態になる事が仕事に限らず一番重要だと常々思っています。 感情がものを動かすことの大切さもよく分かりますが、視野の狭い状態での感情は大概の場合否定と拒否に偏る事が多くなり大切な事が見えなくなる可能性が高いですね。 お客様は美容師のためにお金を払っているのではなく自分の美のために支払っているのが当然なのです。
美容師個人がいい気持ちになって仕事をしている場合ではないのでは?  と思います。